第5回

調息(呼吸法)〜呼吸は命の要、清浄な大気と調息で心身が癒される〜

調息の基本的な心得として、鼻腔・口腔内を清潔に保つことが重要。

呼吸のリズムや深さは、自律神経によって無意識のうちに制御されています。そのおかげで寝ていても、または軽い意識障害があったとしても、呼吸が停止することはありません。同時に自分の意思とイメージで、ある程度は速さや深さを変えたり、短時間止めたりすることが出来ます。これが「調息(呼吸法)」です。

調息の心得としてまず大切なことは、普段から鼻腔・口腔内を清潔に保つことです。目・耳・鼻に異常が無いか時折、医師にチェックしてもらう、口腔ケアを心掛け鼻洗いやうがい、歯磨きなどきちんとする、喫煙者は禁煙を心掛けることです。大気も口鼻も清浄でなければ、幾ら呼吸法を学んでも効果は半減してしまいます。

口腔内が汚いと肺炎、胃炎などを引き起こし、命を縮める怖れがあります。ご高齢の方は誤嚥が起こりやすいので、ハミング呼吸やうがい、舌運動などを活用して喉を鍛えると同時に、鼻腔・口腔の清潔を保つことが極めて大切ですね。

呼吸を自由に操れることは、ある程度、自律神経や脳・心肺機能も制御できるということです。そのうち、自分の心身や生体エネルギーの制御もできそうですね。ヨガ、気功、導引法、瞑想などの領域でも調息は大切な技法で、チャクラやクンダリーニの活性、超常能力開発などにも活用されています。

調息で自律神経のバランスを整え、脳・心肺機能を高める呼吸法四種。

調息・呼吸法は数多くありますが、中でもよく知られている深くゆっくりの腹式呼吸法はお勧めです。呼吸の浅い人は自律神経のバランスが狂いやすくなりますから、普段から練習しておかれると良いかと思います。私が普段活用している調息法を紹介します。

【1】腹式深呼吸:鼻からゆっくりと呼吸する

  1. まず息をしっかりと吐き切る
  2. 息をゆっくり深く吸い込み、しっかりお腹を膨らませる
  3. ゆっくり息を吐いていき、出し切るようにする

これを繰り返していると、お腹が温かくなりませんか。応用として、息を吸うとき「お腹に入れる」「胸に入れる」「脳に入れると」と想いながらお腹、胸、脳を空気で充たし膨らませていくイメージ、呼気では脳、胸部、腹部の順で吐き出すとイメージしていくと脳から胸腹部領域まで活性化するでしょう。ひと工夫するだけで、上級者用の脳胸腹式・深呼吸法に変貌しますね。

【2】丹田呼吸:下腹部を意識しながら行う

  1. 腹式深呼吸に慣れてきたら、息を吸い始めるタイミングで肛門を締め、吐くとき緩めるイメージをする(逆のタイミングでやって見るのも良い)
  2. そして恥骨と尾骨の間に意識を置き、いつも下腹を少し膨らませた感じを維持しながら呼吸を続ける

【3】ハミング呼吸法:鼻から吐く時に鼻歌の要領で、「ふぅ~~ん」と長めのハミングをする

  1. 呼気 鼻から息を吐きながら高い音でハミングすると、音振動は上昇し脳、脳下垂体、目、鼻などが共振動して刺激・活性化される
  2. 次に息を吐きながら強め低めの音でハミングすると、音振動が喉から下降し甲状腺、胸腺、心・肺周辺までを刺激・活性化する。(上達すると横隔膜と副腎辺りまで届き刺激できる)

ハミング呼吸でホルモン分泌や血流が良くなり、気やエネルギーが動き始めます。※耳鳴りの強い方は、耳ひっぱり神門メソッドをしながら、耳鳴りに近い音域でハミングすると治療効果が倍増します。

【4】循環呼吸法:呼吸の深さ、速度を変えながら循環してみる

  1. 深・徐の呼吸(寛ぎをもたらす)出来るだけゆっくり深い呼吸をする。次第に速度を速めて次の深・速に移る。
  2. 深・速の呼吸(気力が充填される)深い呼吸を何とか維持しながら速度を上げていく。ヨガでいう鞴の呼吸に近い。速度が上がるにつれて呼吸は浅くなり、次の浅・速に移る。
  3. 浅・速の呼吸(陣痛時の呼吸、心身の不快、不安や痛みの除去)可能な限り呼吸を速め、浅速呼吸を維持する。やがて速度が落ち始めたら少しずつ深い呼吸に移行し、深速に戻る。

循環呼吸を行うと、最終的に極めて深くゆっくりの深・徐の呼吸状態になり、呼吸を忘れるほどの寛ぎと至福感を体感できます。チャクラ活性やクンダリーニ覚醒法にも応用できそうな強力な調息法、なかなか難物ですが試みる価値はありますね。

吸気が交感神経を、呼気が副交感神経を刺激し、自律神経系はバランス良く強化されます。ゆっくり深い呼吸を心掛けると、副交感神経もやや優位な状態になり、素晴らしい寛ぎと癒しをもたらしてくれます。

これらの呼吸法に取り組む上で大切なことは、宇宙や天地に繋がる、その波動エネルギーを取り入れるなど、さまざまなイメージを付加しながら試してみること、そして自分の心身に起こる変化を細かく素直に感じ取り楽しむことです。

次回は、日々多くの心身ストレスを抱えている現代人に向けた調心(心理療法・瞑想法)と調身(運動療法)について、少々お話したいと思います。

広島大学名誉教授 土肥雪彦先生 原稿執筆

広島大学名誉教授/県立広島病院名誉院長/あかね会老健シェスタ施設長
土肥 雪彦(どひ きよひこ)先生

1960年広島大学医学部卒業。広島大学医学部教授(第2外科学)、広島大学医学部付属病院長、日本肝移植研究会会長、県立広島病院長、中国労災病院長、医療法人あかね会土谷総合病院顧問などを歴任。現在あかね会老健シェスタ施設長。