谷山 哲浩さん(社会福祉法人いたるセンター 理事長)インタビュー

お父様から福祉事業を引き継いで25年、赤字続きだった経営を立て直し、新たなビジネスを次々と生み出している谷山さん。「福祉には理念とそろばんが重要」と語る谷山さんに、日本社会が抱える福祉の課題とその対応策、日々飲んでいるJWティーについて伺いました。

学生時に起業したビジネスから転向し、父の福祉事業を引き継ぐ。

社会福祉法人いたるセンターは私の父が1967年に創設しました。「いたる」の由来は、森で発見された野生児を引き取り、人間社会で生活できるよう教育を施したことで知られ、知的障がい者教育・福祉の創始者たちに多大な影響を与えたフランスの医師ジャン・イタールから来ています。
今年、当センターは創立53周年を迎えましたが、当初私は引き継ぐつもりはありませんでした。私が学生時に起業した、複数のビジネスで手一杯だったからです。本格的に引き継ぐようになったのは父が脳出血で倒れたことがきっかけです。その時に「引き継いでくれないか」と言われました。しかし、福祉について詳しくないし、自分のビジネスも抱えていたので一度断りました。ところが父が再び倒れ、1回目はリハビリをして杖で歩けるようになるまで回復しましたが、2回目はもう動けないという状態で、話をするのも億劫そうでした。さらに、私が運営していた不動産ビジネスもバブル崩壊を機に風向きが変わり始めたこともあり、福祉という父が生涯を通して取り組んだ仕事に挑戦するのも良いかなと考えたのです。

様々な社会的弱者を地域で包括的にサポートしていく。

2013年には「福祉・医療・教育・農業・介護」の5つの分野で今後の事業計画を発表しました。福祉だけではなく、医療や教育など枠を超えて取り組まなければ、現代の社会問題は解決できないと思ったからです。高齢者や障がい者、子ども、生活困窮者、ニート、ひきこもり、シングルマザーなどの社会的弱者が抱える課題を、地域で包括的に支援していくこと。年齢や性別、国籍、人種、障がい、文化、価値観、ライフスタイル、性的自認を超えて、多様な人財を積極的に活かしていくこと。この2つの取り組みを中心に、まずはグループホーム(共同生活援助施設)を核とした「地域共生型サービス」をスタートさせ、様々な社会的弱者を地域でサポートするコミュニティづくりを進めています。
近年は是正されてきましたが、以前は発達障害の子どもが生まれた場合に親御さんが認めたがらないということがよくありました。近所の目が気になり、早い段階で他の子と違うと感づいても、しっかりとした専門家あるいはクリニックで検査するなどの対処を行わず、一般の学校に通わせてしまうのです。そうすると、その子は周りの生徒からいじめられたり、トラブルを起こしたり、障がい者として発達指導を受けることなく、社会の関わり方を学べずに年齢を重ねてしまいます。あるいは家から出さないということもありました。例えば障がい者の方の兄妹に女の子がいるとします。その女の子が結婚する時に支障をきたすことを恐れて、家の中に閉じ込めて出さない、そんなことが当たり前に行われていました。まずは地域で暮らす私たち一人ひとりが偏見や差別の思いをなくすことが大切です。
また、専門家と共にその子ができることとか、将来性とか、を早めに考えてあげることが必要です。普通に学校で勉強して、いい大学に行って、いい会社に入る。都会に住んで、満員電車で通勤する、そんな生き方だけじゃないということを教えてあげたいです。例えば、タレントのさかなクンは障がいがあることを告白しています。彼は幼い頃、魚のことで頭がいっぱいで学校の成績が酷く、お母様が学校から呼び出されたこともあったそうです。そして学校の先生から「息子さんは魚の絵ばかり描いている。もっとちゃんと勉強をさせてほしい」と言われた際に、「あの子は好きなことに夢中になるのが個性ですから、それでいいんです」と返答したそうです。誰もが同じようになる必要はない。他と違う子がいてもいいのだと、母親は信じていたのです。その後、東京海洋大学名誉博士になったり、絶滅種とされていたクニマスを再発見し、現上皇から感謝の意を伝えられたりするなど、今の活躍ぶりは言うまでもありません。人間には様々な特性があります。絵画だったり、音楽だったり、動物が好きだったり、それを仕事にマッチングさせてあげるような教育が今後ますます必要になると考えています。

介護支援、障がい児支援、就労継続支援(パン事業・チョコ事業)など、いたるセンターの取り組みは多岐にわたる。

深刻な「8050問題」、若年層を生活保護の予備軍から救いたい。

2020年5月には日本の社会課題として深刻化している若年層ひきこもりやニートの若者の居場所づくりと、社会への第一歩を支援する「101カレッジ」を開校しました。高校を卒業した25歳以下(26~34歳までは双方の協議の上、入学を認める場合もある)を対象に、職業体験校として、6ヶ月間の各種職業体験を提供しています。長崎県の大村湾に浮かぶ無人島の田島での自然体験に加え、地域の農漁業者らを“講師”とする職業体験を通じ、社会復帰をサポートします。部屋代や食費など生活費は掛かりますが(月8万円)、学費はすべて無料です。
最近「8050問題」というのがよくニュースで取り上げられるようになりました。「80」代の親が「50」代の子どもの生活を支えるという問題です。背景にあるのは子どもの長期間の「ひきこもり」です。ひきこもりという言葉が社会に出始めた時代から約30年が経ち、未だに親の庇護のもとで暮らしている。いずれ親が亡くなれば、社会性が育っていないため自立して働くことができず、生活保護に頼らざるを得ません。それを未然に防ごうと始めたのが101カレッジです。現在の若年層ひきこもりやニートの子たちは生活保護の予備軍になってしまっています。田島で多様な仕事の中からその人に合った職業を選択し、地元の漁師さんや、農家さん、木工職人など、彼ら・彼女らに「体験弟子入り」することで、自分の適性を見つけ、本当の「生きるチカラ」を身につけさせます。そして、地方は地方で跡継ぎがどんどん減少し、若者の力を必要としています。子どもたちが望めばそこで働き、移住ということもあり得る。このような地方創生にも取り組んでいます。

いたるグループで受け入れる障がい者は「働く意思がある人」。

私が組織運営するうえで心掛けているのは、まず理念をしっかりと構築すること。そして、その理念に共感していただき、一緒に働く人たちと伴走すること。そこに一番力を入れています。さらに、夢を「見える化」しながら、私たちは夢をカタチにしてきました(下図)。社会福祉法人いたるセンターは、創立63周年を迎える2030年までに地球上の「誰一人取り残さない」ことを誓ったSDGs※の17の目標を見据え、そのすべての達成にチャレンジしていきます。そんな私たちが、しなやかな未来の実現に向けてできることは何か。これがいたるグループの「地域包括社会のデザイン」の夢を「見える化」した未来図です。
見える化することで、未来図を見ながら「私は農業がしたい」、「保育がしたい」など、発達障がいの人たちとも想いを共有できます。なぜそうするかというと、いたるグループで受け入れるのは「働く意思がある人」だからです。どんなに障がいが重い方であっても、働く意思のある方を対象としています。他社の施設では一緒に遊ぶことを中心にしているところもありますが、それでは障がい者の方々の自立支援にならない。アートを専門にしている子も、遊びで絵を描いているわけではなく、そのアートをウチで製造販売している「久遠チョコレート」の箱のデザインに使うなどしています。ましてやこれからAIの時代ですから、体の障がいを抱えている方もビジネスに携われる機会が増えてくる。あとは私たちに才能を見抜く力、この子に向いている仕事は何なのか発見する力も必要です。そして、単に働ければ良いというわけではありません。ウチでは害虫駆除の液体の瓶詰め作業もしているのですが、それを間違って障がい者の子が飲んでしまっても大丈夫なようにケミカルなものを使わないようにするなど、安全も担保しなければいけません。
今年で11年目になる、いたるグループの障がい者の方が製造販売を行う「パン工房プクプク」のパンは、安全安心と美味しさが認められ、東京都杉並区が認可するすべての保育施設(保育園・子ども園・保育室他)に無添加・無農薬の昼食おやつパンとして納入されています。また、世界的な問題となっているフードロスを無くすために、売り切れなかったパンは子ども食堂に寄付させていただいております。最近は新たに独自開発した「パンプリン」や「半生ラスク」が好評なんですよ。

※持続可能な開発目標(Sustainable Developement Goalsの略)のこと。2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された国際目標です。

いたるグループの「地域包括社会のデザイン」の夢を「見える化」した未来図。
パン工房プクプク一押しの食パンは「奇跡の食パン」と言われ、一度食べると虜になります。

JWティーは体に染み入り、飲んだ瞬間に良いと分かった。

JWティーを初めて飲んだ時、これは体に良いとすぐに分かりました。体に染み込むようにスーッと入ってきました。ウチのパンは天然酵母、国産小麦、水はアルカリイオン水、塩は沖縄の天然塩など、全部天然のものにこだわっていて、普段からそういうものを体に摂り入れているので、良いものはすぐに体が分かります。コロナ禍ということもあり、まずは体が第一ですね。また、私が日頃健康で気を付けていることは自分の歩ける内は必ず歩くということです。タクシー乗らない、エレベーター乗らない、エスカレーター乗らない。腕立ては必ず1日40回を心掛けています。これまでの習慣にJWティーが加わったことで、より笑顔と健康で頑張っていきたいですね。まだまだ日本の社会福祉には解決しなければならない課題が山積みですから。

谷山哲浩さん

社会福祉法人いたるセンター理事長。
1947年東京都生まれ。1970年慶應義塾大学経済学部卒業後、株式会社ロッテ入社。1972年株式会社ロッテ退社後、学生時に起業したビジネスを法人化し、株式会社タモツ商事を立ち上げ代表取締役就任。1989年社会福祉法人いたる臨床発達指導センター理事就任。1995年社会福祉法人いたる臨床発達指導センター理事長就任。


法人概要

名称 社会福祉法人いたるセンター
住所 〒167-0032 東京都杉並区天沼1-15-18
電話 03-3392-7346(法人本部)
設立 1967年9月11日
職員数 377名(2018年4月1日時点、非常勤含む)
事業所 都内19ヶ所

◎知的障がい者の生活支援及び就労支援
多機能型事業所(杉並区2ヶ所、目黒区1ヶ所)
◎知的障がい者の地域生活支援・自立支援
グループホーム14ヶ所、相談室、居宅介護、短期入所
◎高齢者の訪問介護・予防訪問介護・居宅介護支援
詳細はこちらから

ジェイソン・ウィンターズ・ティー