第16回

認知症とミトコンドリア③

ミトコンドリアを元気にする運動

前号で認知症予防のためには「運動」が有効であるとお伝えしました。たくさんの反響をいただきましたので、もう少し詳しく解説していきます。基本的にはウォーキングやジョギング等、なるべく全身の筋肉をリズム よく動かす有酸素運動を1回30分程度、週2~3回くらいから始めると良いでしょう。その際、腕の前後への振りを大きくする。これにより姿勢も良くなり、上半身や体幹の筋肉も利用できます。さらに歩幅も広がり、エネルギー消費量を増やすことが可能となります。まず3ヶ月、そしてその次の目標として6ヶ月継続すれば必ず体力レベルは上がり、ミトコンドリアを元気にすることにつながります。

「高効率ミトコンドリア 」を作る“ちょいきつめ”の運動

“ちょいきつめ”の運動が「高効率ミトコンドリア」を作る
体力に自信のある方、あるいは時間の無い人には、“ちょいきつめ”の運動をおすすめします。ポイントは、「もうこれ以上できない」と感じるほど強度の高い運動と休憩を、短いインターバルで繰り返すこと。腕立て伏せを全力で20秒行い、10秒休憩して、メニューを休憩ごとにスクワットや片足立ちへ切り替え、これを8セット繰り返すというイメージです。1回の合計トレーニング時間は5~15分といったところでしょう。この 方法はHIIT(ヒット)(High-intensity Interval Training:高強度インターバルトレーニング)と呼ばれます。短時間高負荷のHIITを週に数回だけ取り入れるのは、忙しくて毎日30分歩く余裕がないような現役世代にとっては良い習慣でしょう。注意点は、いきなり激しすぎる運動をして怪我をしないようにすることです。
※老化の原因となる活性酸素の発生を減らしつつ、エネルギーをたくさん産生するミトコンドリア。
慶應義塾大学 予防医療センター 伊藤裕先生
原稿執筆

慶應義塾大学 予防医療センター 特任教授
伊藤 裕(いとう ひろし)先生

京都大学医学部卒業後、ハーバード大学、スタンフォード大学医学部博士研究員を経て、慶応義塾大学医学部教授を務める。2003年に世界で初めて「メタボリックドミノ」を提唱。世界に先駆けて胃から分泌される「グレリン」がミトコンドリアを元気にすると発見。メディアに多数登場。